腰繩こしなわ)” の例文
新字:腰縄
その身内のものが手錠、腰繩こしなわの姿で、裁判所の庭を通り過ぎようとした時、かぶっていた編笠あみがさのかげから黙って彼に挨拶あいさつした時のことを思出すことが出来る。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この一行の中には、浪士らのために人質に取られて、腰繩こしなわで連れられて来た一人の飯田の商人もあった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
遠い島にでも流された人のように自分の境涯をよくたとえて見た岸本は、自分で自分の手錠を解き腰繩こしなわを解く思いをして、わびしい自責の生活から離れようとしていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もっとも、福島からは四人の足軽あしがるが付き添って来たが、二十二人ともに残らず腰繩こしなわ手錠であった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼は庭のすみのなしの木のかげに隠れて、腰繩こしなわ手錠をかけられた不幸な村民を見ていたことがあるが、貧窮な黒鍬くろくわ小前こまえのものを思う彼の心はすでにそのころから養われた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのとがによって腰繩こしなわ手錠で宿役人の中へ預けられることになった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)