脱却だっきゃく)” の例文
後に新井白石あらいはくせきの如き名家を出したにかかわらず、なお容易にその継承し来った五山僧侶そうりょの文学の余習を脱却だっきゃくし得なかったのであるが
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかし彼は衣食する上にはある英字新聞の記者をつとめているのだった。僕はどう云う芸術家も脱却だっきゃく出来ない「みせ」を考え、つとめて話を明るくしようとした。
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
失礼ながら時代後れだとも思いました。封建ほうけん時代の人間の団隊のようにも考えました。しかしそう考えた私はついに一種の淋しさを脱却だっきゃくする訳に行かなかったのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わずかに地理歴史の初歩を読むも、その心事はすでに旧套きゅうとう脱却だっきゃくして高尚ならざるを得ず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かれらを、日本の青年に通有な、そうした無意味な構え心から脱却だっきゃくさせようとしても、それは、友愛塾の一週間ぐらいの共同生活では、どうにもならないことだったのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
私はこの日をもって模範生を脱却だっきゃくした。国分はもう私に頭が上らない。他の連中も私を恐れ始めた。以来私は卒業まで餓鬼大将として押し通した。子供のことを小さな野蛮人というが、実際うだ。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)