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肥前屋
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ひぜんや
偖又
其頃兩換町に
島屋治兵衞とて兩替屋ありけるが
肥前屋小兵衞は此家へ
度々兩換の事にて行店の者にも
心安く成て
篤と樣子を窺ふに概略勝手も
分りしかば是ぞ
好らんと思ひ仁左衞門へ島屋の事を
又々
博奕に
引懸り肥前屋小兵衞方にて貰ひし
彼六兩は殘らず
負て仕舞元の通りの
手振となりけれ共
綿入羽織ばかりは殘り有事故種々
思案なし此上は如何共
詮方なければ元へ立歸るより外なしと本町二丁目なる
肥前屋小兵衞の方へ行御
免下されと店へ
上るゆゑ番頭大に
困り
折角の御出に候へども主人小兵衞儀は