肌質きめ)” の例文
なんという肌質きめのこまかい室内の静さだろう。それは皮膚に触れると淡雪のように溶ける素絹のように濡れて薄く包む。
食魔に贈る (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
若者であって一度この威猛高いたけだかな誇張の態度に身を任せたものは二度と沈潜して肌質きめをこまかくするのは余程難しかった。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しかし、私はそう答えながら、ものごとを片付けるなら一番あとにして下さいとたのむ。それほど私には、片付けられるまでの途中の肌質きめのこまかいなやましさがなつかしく大事なのだから。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
雪子はあらかじめぞりつと寒気を催すと共に、その不快な醜さによつてかの女の神経の肌質きめをさゝくれ立たされることを覚悟してゐたが、兄の手振りを見ておや/\と思つて安心した。
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
現実に住み飽きてしまったり、現実の粗暴そぼう野卑やひ愛憎あいぞうをつかしたり、あまりに精神の肌質きめのこまかいため、現実から追い捲くられたりした生きものであって、死ぬには、まだ生命力があり過ぎる。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)