老祖母おばあさん)” の例文
お種がまだ若くて、自分の生家さとの方に居た娘の頃——丁度橋本から縁談のあった当時——あの頃は、父が居た、母が居た、老祖母おばあさんが居た。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お雪が生家さとの方で老祖母おばあさんの死去したという報知しらせは、旅にある三吉を驚かした。二三日しか彼は磯辺に逗留とうりゅうしなかった。電報を受取ると直ぐ急いで家の方へ引返して来た。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
相変らず温厚で、勤勉なのは、この少壮としわかな会社員だ。シッカリとした老祖母おばあさんが附いているだけに、親譲りの夏羽織などを着て、一寸訪ねて来るにも服装みなりくずさなかった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三吉は直樹の老祖母おばあさんの話だと言って、正太の生命いのちが三年持つものなら、豊世が傍に居ては一年しか持つまい、とあの七十の余までも生き延びた老祖母が言ったことをそこへ持出した。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それにむかって、サッパリと汗不知あせしらずでも附けようとすると、往時むかし小泉の老祖母おばあさんが六十余に成るまで身だしなみを忘れずに、毎日薄化粧したことなどが、昔風の婦人おんなの手本としてお種の胸に浮んだ。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)