置文おきぶみ)” の例文
以てあたる所存ではおりまする。がただ一つ、兄上の胸底には、いまなお、鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみが、お忘れなくあるのかないのか、それだけが
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄者あにじゃ。……思い出してください。直義は鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみを今とて夢にも忘れてはおりません。兄者には、いつかあれを、お忘れではないのですか」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わが家には、家祖家時公の“置文おきぶみ”というものがあった。これは少弐しょうにの家の置文といってよかろう。護符ごふとして、大事に肌に持っているがよい」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かの鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみは、そのときから彼の青春を、或る未知数な日までの、氷の中に閉じこめてしまっていた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ると壇には、足利家先祖の仮位牌と、またとくに、高氏の祖父にあたる七代の人——鑁阿寺ばんなじに謎の置文おきぶみをのこして憤死した——例の家時の位牌がべつにまつられていた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家祖家時の“鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみ”も高氏の胸のふかいところで呼吸していたのではあるまいか。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そちは、わしの秘事を、ここで初めて口に出した。——かの鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみのことまでを」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「特に、若殿御元服の日、その報告を御先祖にささげられた後で、重臣どもの意見の相違から、ついに“置文おきぶみ”の披見なく、御帰館となったことは、なお御記憶でござりましょうが」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
脚長あしなが香炉台こうろだいのうえに、床間掛とこのまがけの横物が見える。尊氏は紙燭を手に立って顔をよせた。その一、二ぎょうでもすぐわからずにはいられない物である。家祖かそ家時からの鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみだった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみ
置文おきぶみ
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)