緩急かんきゅう)” の例文
一突一退、緩急かんきゅうの呼吸をはかって、やがて関興かんこうの一軍が討って出るのを見たら、そのとき初めて、一斉に奮力をあげて死戦せい
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「文人読者をして新思想を抱かしめ、知らず識らず旧思想を嫌悪けんお否定するに至らしむるの用意なかるべからず」とは手段の緩急かんきゅうをいへるなり。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
時の緩急かんきゅうはからず、事の難易を問わず、理想を直ちに実行せんとするは、急進家なり、しこうして革命家なるものは、それ急進家中の最急進家にあらずして何ぞや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ねえドノバン! きみはぼくを誤解ごかいしてるんじゃないか、ぼくらは休暇きゅうかを利用して近海航行を計画したときに、たがいにちかった第一条は、友愛を主として緩急かんきゅう相救あいすく
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
生死とは緩急かんきゅう、大小、寒暑と同じく、対照の連想からして、日常一束ひとたばに使用される言葉である。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
事に当りて論ず可きは大に論じて遠慮に及ばずといえども、等しく議論するにも其口調に緩急かんきゅう文野ぶんやの別あれば、其辺は格別に注意す可き所なり。口頭の談論は紙上の文章の如し。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
一個は大和やまとながらの床しい手裏剣! 他は南蛮渡来なんばんとらいあやしき種ガ島——茲に緩急かんきゅう、二様の飛び道具同士が、はしなくも命を的に優劣雌雄を決することに立到りましたが、勿論
あきらかな方向を持ち得ない——また悠々ゆうゆうたる緩急かんきゅうを取り得ない——奇変一法の兵となった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女の務むべき家事は沢山あるが、病人が出来た暁にはその家事の内でも緩急かんきゅうを考へて先づ急な者だけをやつて置いて、急がない事は後廻しにするやうにしなくては病人の介抱などは出来るはずがない。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)