緒〆おじめ)” の例文
六部はなにか急ぎ足だったが、もう一度軒下へもどって行って、隙洩すきも燈火あかりにかざしながら、仔細に印籠の模様や緒〆おじめを調べていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その席へ幇間ほうかんが一人やって来て言うことには、ただいませつは、途中で結構なお煙草入の落ちていたのを見て参りました、金唐革きんからかわ珊瑚珠さんごじゅ緒〆おじめ
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鬱金うこん木綿が薄よごれて、しなびた包、おちへ来て一霜ひとしもくらった、大角豆ささげのようなのを嬉しそうに開けて、一粒々々、根附だ、玉だ、緒〆おじめだと、むかしから伝われば
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真鍮のこの煙管さえ、その中に置いたら異彩を放ちそうな、がらくた沢山、根附ねつけ緒〆おじめたぐい。古庖丁、塵劫記じんこうきなどを取交ぜて、石炭箱を台に、雨戸をよこたえ、赤毛布あかげっとを敷いて並べてある。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)