総檜そうひのき)” の例文
旧字:總檜
ご改革を機会に京屋のとなりの長野屋という旅籠屋はたごやを買いとり、その地面へ総檜そうひのき二階建のたいそうもない普請をし
顎十郎捕物帳:18 永代経 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
すべてが総檜そうひのきの建物で中中美事であつた。わけてふしぎなのは、襖の手かけに五分四方くらゐの穴があいてゐて鍵のやうにかつちりと開いたり塞いだりできる覗きがあつた。
名園の落水 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
総檜そうひのき破風造はふづくり、青銅瓦のさびも物々しく、数百千種の薬草霊草から発する香気は、馥郁ふくいくとして音羽十町四方に匂ったと言われるくらい、幕府の御薬園の権威は大したもので
とうとう出たのは、掘割を、前にひかえた、立派な角店、——総檜そうひのき土蔵くらづくり、金看板を夜中ながらわざと下ろさず、堂々と威を張っているのが、いわずと知れた広海屋の本店だ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
門は総檜そうひのき冠木門かぶきもんにきまり、へいは大谷石。洋館は階上階下とも冷暖房装置にし、日本間のほうは数寄屋造り。庭はいちめんの芝生であるが、これはイギリスからエバー・グリーンを取りよせる。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)