絵空事えそらごと)” の例文
旧字:繪空事
犯罪学の書物の挿絵を見慣れた人には、さして珍らしい姿ではないが、女の倭文子には、絵空事えそらごとでない写真であるだけに、本当の惨死体を見たと同じ、胸の悪くなる様なこわさであった。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
松風まつかぜ村雨むらさめ」という二人の女のまいは、『源氏物語げんじものがたり』にもとづいて作ったというが、それが二つの桶を棒の両方にになって、しおを汲みに行くところを舞うのは、絵空事えそらごとというものである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
人がとめなければ、よっぽどやったに違いない。腕に覚えのある人でなければ、このような張りのある文章は書けない。けれども、これは鴎外の小説である。小説は絵空事えそらごとと昔からきまっている。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
敢えて絵空事えそらごとなんぞと言うなかれ。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)