結跏けっか)” の例文
この矮小わいしょう若僧じゃくそうは、まだ出家をしない前、ただの俗人としてここへ修業に来た時、七日の間結跏けっかしたぎり少しも動かなかったのである。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
結跏けっか参禅の修業も打開し能わざるものが今こそかれの眼前にあらわれた、さんらんたる光輝を放って今こそかれの面前にあらわれたのだ。
荒法師 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この上体を静寂な調和のうちに安置する大らかな結跏けっかの形といい、すべての面と線とから滾々こんこんとしてつきない美の泉を湧き出させているように思われる。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
鉄鉢てっぱつを両手で捧げた者、猛虎を足に踏まえた者、香炉に向かって坐っている者、合掌し結跏けっか趺坐ふざしている者、そうして雲竜にしている者……千態万状の羅漢の像が
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あの形で正しくゆるやかに——といっても結跏けっかといって、足をあんなに組むには及ばねえ。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
禅家などでは一七日いちしちにちを限って大悟して見せるなどとすさまじいいきおい結跏けっかする連中もある事だから、うちの主人もどうかなったろう、死ぬか生きるか何とか片付いたろうと
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
形ばかりの床の間に向って、結跏けっかを組みはじめました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
平生ちんばで充分に足を組む事ができないのをいきどおって、死ぬ間際まぎわに、今日きょうこそおれの意のごとくにして見せると云いながら、悪い方の足を無理に折っぺしょって、結跏けっかしたため
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)