素通すどおり)” の例文
私のように何も無い者は、生活に疲れて路傍みちばたに倒れて居ても、誰一人たれひとり振向いて見ても呉れない。皆素通すどおりして匇々さッさと行って了う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あんまり身を入れて話をする——聞く——していたので、邪魔になっては、という遠慮か、四五人こっちをのぞいては、素通すどおりをしたのがあります。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この辺は河岸縁かしっぶち三日月長屋みかづきながやも同然滅多めった素通すどおりの出来る処じゃないんだが、今日はこうして安閑と煙草がんでいられるたア何だか拍子ぬけがしてきつねにでもつままれたようだ。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
日和見ひよりみ、そのうちに芥川賞素通すどおりして、拙稿返送という憂目、再三ならずございました。
創生記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
と、半分白い目で天を仰いで、拗ねたようにそのまま素通すどおり
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)