“納簾(のれん)” の例文
上框(あがりかまち)の板の間に上ると、中仕切(なかしき)りの障子(しょうじ)に、赤い布片(きれ)を紐(ひも)のように細く切り、その先へ重りの鈴をつけた納簾(のれん)のようなものが一面にさげてある。
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
浅葱(あさぎ)納簾(のれん)の間(あひだ)から
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
破団扇(やれうちわ)の音も成るべくしないように蚊を追いながら、お雪が店先に坐っている時の、こういう様子を納簾(のれん)の間から透(すか)し見て、それから推察したものに外ならない。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかし柳畠にはもう別荘らしい門構もなく、また堤には一本の桜もない。両側に立ち続く小家(こいえ)は、堤の上に板橋をかけわたし、日満食堂などと書いた納簾(のれん)を飜しているのもある。
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
物に追われるような此心持は、折から急に吹出した風が表通から路地に流れ込み、あち等こち等へ突当った末、小さな窓から家の内(なか)まで入って来て、鈴のついた納簾(のれん)の紐(ひも)をゆする。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)