紋付袴もんつきはかま)” の例文
あるひ屹度きつと、及第の通知が間違つてゐたのではないかと、うつたへるやうにして父兄席を見ると、木綿の紋付袴もんつきはかまの父は人の肩越しに爪立つまだ
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
純朴じゅんぼくな人々ばかりである。中には紋付袴もんつきはかま慇懃いんぎんを極める人もあって、野人の私はすくなからず恐縮したが、そのなかに本位田兵之助という名刺を示された人がある。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その中で正太郎の鏡餅はうすいっぱいにくのだという自慢のもので、上下の区別がほとんど分らないほど大きく、それを正太郎は紋付袴もんつきはかまで持ってくるのであった。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
……そうしたら警察の奥の方から出て来た紋付袴もんつきはかまの立派な人が、ウチ達をジロジロ見て、警部さんに許してやれと云うたので、タッタ一晩、警察に寝かされただけで
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
紋付袴もんつきはかまの叔父だの伯母だのに囲まれながら、大根の花の村を、じっと見ていた。
下頭橋由来 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水桶みずおけをさげた姉妹たちのほかに正太郎が紋付袴もんつきはかまで胸をのけぞってゆくのに並んで、小さい躯の千吉も袴はつけていないがたけの長い羽織を着、供え団子のお華束けそくを両手でささげるように持って
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
七ツ下りの紋付袴もんつきはかまを着けた彼は殆んど歩く力もないくらい青ざめていた。
老巡査 (新字新仮名) / 夢野久作(著)