粟粒あはつぶ)” の例文
母は風邪にかかつたせゐか、それとも又下唇したくちびるに出来た粟粒あはつぶ程の腫物はれもののせゐか、気持が悪いと申したぎり、朝の御飯も頂きません。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
天界からみたら粟粒あはつぶほどの人間なンだが、やつぱりひとかどの理窟がついて、うぬぼれも、みえもあるしね……。人間には仙人になる方法もないンだ。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
言はれて雲飛うんぴ仔細しさい孔中こうちゆうると果して小さな堂宇だうゝがあつて、粟粒あはつぶほどの大さで、一寸ちよつとくらゐではけつしてつかぬほどのものである、又た孔竅あなかず計算けいさんするとこれ亦た九十二ある。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
粟粒あはつぶよりも小さい一部分なんだ。そのわれ/\の太陽系は広い宇宙を旅してるんだ。無論宇宙の広さに比べては、それは蝸牛かたつむりの歩みに等しいけれども、それでも少しづゝ、旅してゐる事は確かなんだ。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)