米利堅メリケン)” の例文
徳川氏の世を覆したものは米利堅メリケンの黒船であった。浪士をして華族とならしめた新日本の軍国は北米合衆国の飛行機に粉砕されてしまった。
冬日の窓 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この海を Pacific Ocean と言います、太平洋とか大海原おおうなばらとか訳しますかな、米利堅メリケンの国まではさえぎるものが一つもありません。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それには一度毛唐人の国へ行って来た方が好いとのお話……私は、実は貴郎に、米利堅メリケンへでも、和蘭陀オランダへでも渡航して頂きたい位に考えて居りますのです。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
来る者は誰ぞ。艦上の人は怪んで船灯を下しこれを照らす。彼その光を借りて漢字を書して曰く、「われら、米利堅メリケンに往かんと欲す、君、幸いにこれを大将に請え」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
千鳥足まで米利堅メリケン気取りの。阿呆つくした十年がかりじゃ。見たり聞いたりして来た中でも。タッタ一つの土産みやげというのが。ナント恐ろし地獄の話じゃ……スカラカ、ポクポク。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「訳稿未ダ半ニ及バズシテ忽チ米利堅メリケンノ行アリ、因テ約ニ命ジテ続訳セシム……茲ニ先生ノ栄帰ヲ待テ点閲ヲ乞ヒ」云々とあるから、この「政表」なる訳語は多分福沢先生が渡米前
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
諸侯辞するに船なきを以てせば、彼れ必ず曰わん、船は米利堅メリケンの富む所なり、多寡はそのもとむる所に任ぜん、その価直のごときは、五年もしくは十年を待ちて、漸次に償清せよと。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
癸丑ノ夏米利堅メリケン果シテ来テ互市ごしフ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いまだ刀槍刺撃の技をくわしくするあたわず、いまだ兵馬闘争の法を練るあたわず、汎々はんぱん悠々ゆうゆうとして歳月を玩愒がんかいす。支那の書を読むに及んで、やや欧羅巴ヨーロッパ米利堅メリケンの風教を聞知し、すなわち五大州を周遊せんと欲す。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)