ふえ)” の例文
されば之に代って昭和時代の東京市中に哀愁脉々たる夜曲を奏するもの、唯南京蕎麦売のふえがあるばかりとなった。
巷の声 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
勿論その尊敬は、悲壮と云うような観念から惹き起される一種の尊敬心で、例えば頽廃たいはいした古廟に白髪の伶人れいじんが端坐してふえの秘曲を奏している、それとこれと同じような感があった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
軒にのぞいた紅梅の空高く、たこうなりがふえのようにゆたかに聞えていた。
曲亭馬琴 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
みてかなしきふえとなる
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
きたりてたまふえを吹き
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
欧洲おうしゅう乱後の世をいましむる思想界の警鐘もわが耳にはどうやら街上あめを売るおきなふえに同じく食うては寝てのみ暮らすこの二、三年冬の寒からず夏の暑からぬ日が何よりも嬉しい。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
きたりてたまふえを吹き
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)