空疎くうそ)” の例文
それにともなう空疎くうそ饒舌じょうぜつとは、どこか人をぼうっとさせるような、わきへつれて行くようなものをもっていた。
増上寺の五重の塔を見上げたり、伽藍がらんの横の松の樹を撫でて見たり、塀のそばに近づいて見たりしながら、唖は、空疎くうそに、鈍々どんどんとした歩調で、御霊廟の裏へ曲がって行く。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心の秩序を度外視してどのように外面の秩序を整えたにしても空疎くうそである。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
かれがこれまで信奉しんぽうもし、実践じっせんにもつとめて来た、友愛・正義・自主・自律・創造、といったような、社会生活の基本的徳目とくもくは、今のかれには、全く力のない、空疎くうそな言葉の羅列られつでしかなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
しぜん幕府も自己の立場も空疎くうそなものに浮いてしまう。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)