穏健おんけん)” の例文
中古の鼠色ねず縮緬ちりめん兵児帯へこおびが、腰でだらしなくもなく、きりっとでもなく穏健おんけんしまっている。古いセルの単衣ひとえ、少したけが長過ぎる。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
これまで穏健おんけんの人と見えていたオンドリまでが、もはや気が変になってしまったようになったのだ。万事休ばんじきゅうすである。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
御道理ごもっともだ。しかし錚々館そうそうかん時代から見ると、君もひどく思想が穏健おんけんになったね。年の所為せいだろうか?」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
やがて理論的にも又その通り証明されるにちがいありません。私の国の孟子メンシアスと云う人は徳の高い人は家畜かちくの殺される処又料理される処を見ないと云いました。ごく穏健おんけんな考であります。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
思想はたいへん穏健おんけんです。むろん、ごくありふれた考え方ですけども。
「それくらいの穏健おんけんな勤めなら、なにも家内を隠すほどのこともなかったですね」
第二のは、チーズやバターやミルク、それから卵などならば、まあものの命をとるというわけではないから、さしつかえない、また大してからだに毒になるまいというので、割合穏健おんけんな考であります。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)