稲妻形いなずまがた)” の例文
旧字:稻妻形
稲妻形いなずまがたについている石段いしだんの道を見まわしても、きれいな朝露あさつゆがたたえられて、人の土足どそくにふみにじられているようすはない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黄葉こうようと枯枝の隙間すきまを動いてくる彼らのみちは、稲妻形いなずまがたに林のうちを抜けられるように、また比較的急な勾配こうばいを楽にのぼられるように、作ってあるので
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おかはさして高くはないが、奇岩きがん乱石らんせき急勾配きゅうこうばい、いちめんにいしげっている落葉松からまつの中を、わずかに、石をたたんだ細道ほそみち稲妻形いなずまがたについている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
稲妻形いなずまがたに段々を下りるときは、むやみに下りるばかりで、いくら下りても尽きないのみか、人っ子一人にわないものだから、はなはだ心細かったが、はじめて作事場へ出て、人間に逢ったら
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)