神坂みさか)” の例文
私達がその邊の田舍を窓の外に眺めながら乘つてゆく心は、やがて自分等の郷里の方の神坂みさかから落合へ通ふ山路なぞを遠く思ひだす心であつた。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
坂は繰り返して述べたように上り下りの路をいうものであるが、其ままそれが峠の名となって残ることは有り得る。木曾の神坂みさか、甲州の御坂みさかなどは其例で、峠の字は後になって添えられたものであろう。
(新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
荒町にある村社諏訪すわ分社の禰宜ねぎ松下千里はもとより、この祭りを盛んにすることにかけては神坂みさか村小学校の訓導小倉啓助が大いに力瘤ちからこぶを入れている。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
我里は木曾の谷の、名に負ふ神坂みさかの村の、さかしき里にはあれど、見霽みはらしのよろしき里、美濃の山近江おうみの山、はろばろに見えくる里、恵那えなの山近くそびえて、胆吹山いぶきやま髣髴ほのかにも見ゆ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
幼い和助なぞは半分夢のように母の言葉を聞いて、その心は国旗や提灯ちょうちんを掲げつらねた旧い宿場のにぎやかさや、神坂みさか村小学校生徒一同でお出迎えする村はずれの方へ行っていた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ことしの秋は、柳ちゃんを連れて神坂みさかの土を踏みたいとは、かねてから楽しみにしていたことでしたが、いろいろの都合で十一月のはじめごろに出かけることはちょっとむつかしくなりました。
再婚について (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
神坂みさかも今は秋の収穫とりいれでいそがしくもまた楽しい時と思います。
再婚について (新字新仮名) / 島崎藤村(著)