神代杉じんだいすぎ)” の例文
そのマグダレナのマリアをもらって、神代杉じんだいすぎの安額縁に収めて、下宿の楣間びかんに掲げてあったら、美人の写真なんかかけてけしからん、と言った友人もあった。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そそり立つ神代杉じんだいすぎの真っ黒な影が、星の空を狭めているので、男山八幡の広前はうるしのような闇であった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
籠行燈かごあんどんの中にともした電燈が所々に丸い影を神代杉じんだいすぎの天井にうつしている。うす暗い床の間には、寒梅と水仙とが古銅の瓶にしおらしく投げ入れてあった。軸は太祇たいぎの筆であろう。
老年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今は水田となっている元の丹那沼の中からは、時々神代杉じんだいすぎを掘出すという事から始まって、土中から掘出し物をする話しが土地の者の口から出た。田代の古城跡から武器が出たとか。
丹那山の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
六畳の座敷は南向みなみむきで、拭き込んだ椽側えんがわはじ神代杉じんだいすぎ手拭懸てぬぐいかけが置いてある。軒下のきしたから丸い手水桶ちょうずおけを鉄のくさりで釣るしたのは洒落しゃれているが、その下に一叢ひとむら木賊とくさをあしらった所が一段のおもむきを添える。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
布団の下から取り出したのは、神代杉じんだいすぎの手箱であった。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)