祈祷書きとうしょ)” の例文
祈祷書きとうしょのみでは国家統治とうちはできない」というのは、永い中世紀の間宗教の中にうずもれていた政治を、その固有の基礎の上によみがえらせ
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
次ぎの日曜の明け方、教会に往こうとして月あかりのなかに台所で祈祷書きとうしょを捜していたフリイドリッヒは、戸口で寝巻姿のままの叔父のシモンに呼びとめられる。
晩夏 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
当番とうばん生徒せいと祈祷書きとうしょを見ながら、歌わないで読むことになっている祈祷きとう朗誦ろうしょうした——その朗誦がやはり大声の無表情むひょうじょうで、一口にいえば、何もかもいつものとおりだった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
がしだいにそれを矯正きょうせいしていった。彼女は大きい活字のラテン語の祈祷書きとうしょのほかは何も読まなかった。彼女はラテン語は知らなかったが、その書物の意味はよく了解した。
彼女は弱々しく立ちあがり、年とった体をこごめて祈りをささげ、絶えず祈祷書きとうしょを読んでいたが、その手はしびれ、眼はおとろえて、読むことはできず、あきらかにそらんじているのだった。
四折判クオートーゴシック字体の非常な珍本——ある忘れられた教会の祈祷書きとうしょ——“Vigilioe Mortuorum secundum Chorum Ecclesioe Maguntinoe(21)”を
「手に持っているのはなんだ? 祈祷書きとうしょかね?」
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
祈祷書きとうしょを読み、家の片すみで人々がわれ汝を愛すをささやいてる間に、他の片すみでアヴェ・マリアをささやき、そしてマリユスとコゼットとを漠然ばくぜんと二つの影のようにながめていた。
毎日寸眠の後に午前の一時から三時まで起き上がって日課の祈祷書きとうしょをよみ朝の祈祷を歌い、四季ともにわらのふとんの上にセルの毛布にくるまって寝、決して湯にはいらず、決して火をたかず