硯蓋すずりぶた)” の例文
男の外国人は側に居る善どんに指さしして、蒔絵まきえのある硯蓋すずりぶたを幾枚となく棚から卸させて見た。しまいに捨吉に向って値段を聞いた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
二階には手炙火鉢てあぶりが運ばれた。吸物椀や硯蓋すずりぶたのたぐいも運び出された。冬の西日が窓に明るいので女房は屏風を立て廻してくれた。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ただ、銀泥色絵ぎんでいいろえふすまのまえには、蒔絵まきえ硯蓋すずりぶたふでが一本落ちてあって、そこにいるはずの咲耶子さくやこのすがたも見えず、お小姓こしょう星川余一ほしかわよいちのかげも見当みあたらなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外記の前には盃台が置かれて、吸物椀や硯蓋すずりぶたが型の如くにならべてあった。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)