破顔はがん)” の例文
旧字:破顏
物は言はで打笑うちゑめる富山のあぎといよいよひろがれり。早くもその意を得てや破顔はがんせるあるじの目は、すすき切疵きりきずの如くほとほと有か無きかになりぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
莫迦ばかッ。折角せっかく訓辞くんじが、効目ききめなしに、なっちまったじゃないか!」口のところへ持ってゆきかけたさかずきを途中で停めて、長造は破顔はがんした。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
平次はツイ破顔はがん一笑します。まだ三十を越したばかり、にっこりするととんだ愛嬌あいきょうのある平次の顔が、おびえ切った相手の男の心持をやわらげたようでもあります。
と思ふと、静かにうなづいて、やをら十吉の方へ眼ざしを向けると、破顔はがん微笑した。……
灰色の眼の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
と、破顔はがんして、自分のまえに立ちどまった者がある。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
獣医はいい眼つきで私を眺め、破顔はがん一笑した。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
と、課長は一郎の方を向いて破顔はがんした。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)