矮短わいたん)” の例文
伯は、トム公という名と、あの晩の——右脚爆失以来である路上の襲撃者であった矮短わいたんなかんかん虫に、すくなからず興味をもった様子である。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから余り燈火あかりに近くすわると、そのうすい髪の根までがいて見えて、この体躯矮短わいたんにして胆斗たんとのごとき奇男児の風貌、いやが上にも魁偉かいいに見せ過ぎる嫌いがある。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あッと、豆菊と付添の二人が、窓を開けたとたんに、トム公の矮短わいたんなからだは、激流する空気の震音の中を、もんどり打って、線路堤から沼地らしいあしのなかに振り飛ばされていた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういうと侏儒は、矮短わいたんな身を起こして、孫兵衛の死骸のそばへ歩いていった。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十四のトム公は、生活力をスリらした四十男をしりえに連れて、ぽかぽかと木靴を躍らして歩いた。矮短わいたんな体をズボンつりで締めて、メリケンがりの頭へがまいぼみたいに光る鳥打帽を乗っけている。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生れつき余り丈夫でもない肉体なのに、この矮短わいたんな一小躯しょうくをもっても、それにって来られただけの意志を作っておいてくれた幼少時の貧苦と、世路の逆境にも、沁々しみじみありがたさを思う日もあった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、その矮短わいたんな影を透かして見ました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)