矢羽やばね)” の例文
と、啓之助をゆすっていると、どこからか、ヒュッ——と風を切ってきた矢が、三次の喉笛のどぶえを貫いて、白い矢羽やばねを真ッ赤に染めた。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの冷徹氷のような理智の短剣、独創の矢羽やばねが風を切る自我の鏑矢かぶらや、この二つでした。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
手は刀を離さず、必死となっ夢我むが夢中、きらめくやいばは金剛石の燈下にまろぶ光きら/\截切たちきる音はそらかく矢羽やばねの風をる如く、一足退すさって配合つりあいただす時はことの糸断えて余韵よいんのある如く、こころ糾々きゅうきゅう昂々こうこう
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ここへはいって、すぐ大きな矢羽やばねの着物に帯を廻した千浪は
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
手をのばして、抜き取ってみると、なるほど、妻羽白つまはじろ矢羽やばねの下に、ほそい、書状らしいものが、結びつけてあった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)