みは)” の例文
と俊吉のみはる目に、胸を開くと、手巾ハンケチを当てた。見ると、顔の色が真蒼まっさおになるとともに、垂々ぽたぽたと血に染まるのが、あふれて、わななく指をれる。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
泉原の周囲まわりの人々は一斉に振返って、奇声をあげた小さな日本人を不思議そうにみはっている。泉原は突嗟とっさの間に雑沓ざっとうの間を縫ってM駅行の切符をった。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
山田武太郎と表札の出ている、美妙斎の住居すまいを訪れた、みちのく少女おとめのいなぶねは、田舎娘が来たのかと、気にもかけなかったであろう美妙に、ハッと目をみはらせた。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
妻は私が赤ン坊を連れて帰ったのを見ると、丸い眼をはち切れるようにみはって吃驚した。
愛の為めに (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
月子はちょっと眼をみはり、改めて二人の様子を見た。「大変悲劇的の人らしい」心の中で呟いた。「ほんとに人間というものは、誰彼となく何かしら、悩みを持っているものと見える」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼は嬉しさを隠すことが出来ないで子供のように大きく眼をみはった。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
詩を吟じながら現れた童子、お仙を見ると眼をみはった。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
写真館主は名刺を受取って、吃驚したように眼をみはりながら答えた。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
「まあ」という酒場の浜路、眼をみはったものである。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)