眼睫まつげ)” の例文
くれないは眼のふちを薄く染めて、うるおった眼睫まつげの奥から、人の世を夢の底に吸い込むような光りを中野君の方に注いでいる。高柳君はすわやと思った。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
深い眼睫まつげの奥から、ヴィーナスはけるばかりに見詰められている。ひややかなる石膏せっこうの暖まるほど、まろ乳首ちくびの、呼吸につれて、かすかに動くかとあやしまるるほど、女はひとみらしている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)