直江津なおえつ)” の例文
直江津なおえつから来る塩ざかなの荷がそんな山地まで深入りしたのも、もっぱらその街道を千曲川について、さかのぼったものだそうです。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
九歳の時に直江津なおえつの港を出たり、二十有余年の間、各国の汽船で世界中を乗廻して来た為吉にとって、海は故郷であり、慈母の懐ろであった。
上海された男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
寛政の初年に阿波あわからセンバという機械を直江津なおえつ持来もちきたる。一日に千把の稲を扱く故にこの名があった。本名を何というか知らぬと謂っている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私が青い時間表の地図からひらった土地は、日本海に面した直江津なおえつと云う小さい小港だった。ああ海と港の旅情、こんな処へ行ってみたいと思う。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
江戸鮨えどずしの孫娘に生れた静枝は、直江津なおえつまでしか汽車のなかった時分の、偉い女役者が乗込んで来た日の幼かった自分の事も、あの、日本海の荒海から流れ込んでくる
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
徒歩出発地は前にいう太平洋沿岸方面の常州じょうしゅう水戸で、到着地は日本海沿岸の越後国えちごのくに直江津なおえつの予定。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
三人は、紅茶のおかげで眠られぬままに、ボーイ長のそばで、ストーブに石炭をほうり込みながら、前のボースンが、直江津なおえつでほうり上げられた悲惨な話を、思い起こしては語り合った。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
それは義兄あにの陸軍中尉川村国彦かわむらくにひこだった。旗男の長姉ちょうしにあたる露子つゆことついでいるのだった。旗男は、東京の中学の二年生で、夏休を、この直江津なおえつの義兄の家でおくるためにきているのだった。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大手に住む話好きな按摩あんまから、今の駅長のことを聞いたことが有った。この人は新橋から直江津なおえつに移り、車掌を五年勤め、それから助役に七年の月日を送って来たという。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
直江津なおえつの町へ入った。