百日鬘ひゃくにちかずら)” の例文
顔じゅう繃帯に覆われ、月代さかやきは、百日鬘ひゃくにちかずらのように伸び放題。狂的に光りかがやく眼が、いつも凝然じっと千浪を見守って。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
結局が百日鬘ひゃくにちかずら青隈あおぐま公卿悪くげあくの目を睨合にらみあいの見得みえで幕となったので、見物人はイイ気持に看惚みとれただけでよほどな看功者みごうしゃでなければドッチが上手か下手か解らなかった。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
菅が自から評して「山賊」と言ったのは、捨吉自身の写真姿の方に一層よく当嵌あてはまるように思われた。捨吉は友達の言葉をそのまま自分の上に移して、「まるでこの髪は百日鬘ひゃくにちかずらだ」
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あがざかの街を、ぶらぶらのぼってゆくと、やがて大きなやしろの前に出た。鳥居の間から、ひろい境内けいだいが見える。太い銀杏樹いちょうのきが、百日鬘ひゃくにちかずらのように繁っている。彼は石段に足をかけようとした。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)