病蓐びょうじょく)” の例文
近ごろかの尾上家に頼まれて、橘之助の病蓐びょうじょくに附添って、息を引き取るまで世話をしたが、多分の礼も手に入るる、山そだちは山とか、ちと看病づかれも出たので
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夫にして一朝事業に失敗するとか、あるいは長い病蓐びょうじょくに臥すとかいうことの起った場合には、今まで家庭にくすぶっていた妻が奮然立って外に働かねばならぬかも知れぬ。
夫婦共稼ぎと女子の学問 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
病蓐びょうじょく辺で鼠鳴けば病人助からずという(一八五九年板『ノーツ・エンド・キーリス抄記』一二頁)。
愴然そうぜんたる感いと深く、父上母上の我が思いなしにやいたく老いたまいたる、祖母上ばばうえのこの四五日前より中風とやらにかかりたまえりとて、身動きもしたまわず病蓐びょうじょくの上に苦しみいたまえるには
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
濶達豪放の女丈夫! 渠は垂死の病蓐びょうじょくに横たわらんとも、けっしてかくのごとき衰容をなさざるべきなり。烈々たる渠が心中の活火はすでにえたるか。なんぞ渠のはなはだしく冷灰に似たるや。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)