疎通そつう)” の例文
なつかしいという形のない心は、お互いのことばによって疎通そつうせらるる場合が多いが、それは尋常の場合に属することであろう。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
長吉ちやうきちは自分とおいとあひだにはいつのにかたがひ疎通そつうしない感情の相違の生じてる事をあきらかに知つて、さらに深いかなしみを感じた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それから従来の冬籠ふゆごもりの連中との間の、意志と、感情との疎通そつうぶりを考えてみると、どうも安んぜられないものがある。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
口をきくたびに意思の疎通そつうを欠く恐れがあるし、江戸では見かけたこともないいかつい浅黄うらばかりがワイワイくっついているので、小突かれた日にぁ生命があぶない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
単に鼻をぎ合うとか、り合うとか、目をちょっと見合すとかいうだけで、相互そうごの意志が完全に疎通そつうするのに、人間はまわりくどく長たらしい会話をして、しかもなお容易に意志を通じ得ない。