甚平じんべい)” の例文
荷は軽そうなが前屈まえかがみに、てくてく帰る……お千世がじいの植木屋甚平じんべい、名と顱巻はちまき娑婆気しゃばけがある。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうじゃ。誰も生命が惜しいから、魔の森へ入ろうという者はあらせんわ。そういえばお主は昨日の真夜中、甚平じんべいが魔の森の方角で見たという怪しい一件の話を知っとるか」
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
現に夏休みの一日前に数学を教える桐山きりやま教官のお父さんの葬列の通った時にも、ある家の軒下のきしたたたずんだ甚平じんべい一つの老人などは渋団扇しぶうちわひたいへかざしたまま、「ははあ、十五円のとむらいだな」と云った。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
恋はものの男甚平じんべい女紺しぼり
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
僕は足もとの草をむしり、甚平じんべい一つになったNさんに渡した。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)