甘藍キャベツ)” の例文
それから水瓜、甘藍キャベツ球葱たまねぎ、球葱は此辺ではよく出来ませんが、青物市場であまりやすかったからI君が買って来たその裾分すそわけという事でした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
おれには甘藍キャベツといふやつがどうにも鼻もちがならぬのに、メシチャンスカヤ街の小つぽけな店といふ店から、あれの臭ひがぷんぷんとするのだ。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
どすぐろい雨雲が、甘藍キャベツの大葉を巻いたように冠ぶさって、その尖端が常念一帯の脈まで、包んで来ている、雪の峡流は碧い石や黄な石をひたして、水嵩みずかさも多くなって
槍ヶ岳第三回登山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
両側の畑には穂に出て黄ばみかけた柔かな色の燕麦えんばくがあった。またライ麦の層があった。トマトの葉のみどり、甘藍キャベツのさ緑、白い隠元豆の花、唐黍とうきびのあかい毛、——
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
雨のためいためられたに相異ないと、長雨のただ一つの功徳くどくに農夫らのいい合った昆虫こんちゅうも、すさまじい勢で発生した。甘藍キャベツのまわりにはえぞしろちょうがおびただしく飛び廻った。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
家を負う蝸牛かたつむりの可愛気はなくて、ぐちゃりと唯意気地なさを代表した様で、それで青菜甘藍キャベツを何時の間にか意地汚なく喰い尽す蛞蝓と、枯枝の真似して居て
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
地主やかたの端々がチラチラと見えだしたが、やがて百姓小屋のつながりが切れて、その代りに、ところどころ壊れた低い垣根に囲まれた菜園か甘藍キャベツ畠とおぼしき空地あきちへ出ると
この鶏舎といってもいいくらいの小さな庭は板塀で区切ってあって、板塀の向うには、甘藍キャベツや、葱や、馬鈴薯や、甜菜てんさいや、その他いろんな自家用の野菜のつくってある広々とした菜園がつづいていた。