瓢箪ふくべ)” の例文
どれ、無礼講とやりますか。そう、そう、あの馬籠の本陣の方で、わたしは一晩土蔵の中に御厄介になった。あの時、青山君が瓢箪ふくべに酒を
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ちょうど紅葉もみじ時分で、王子おうじたきがわって瓢箪ふくべの酒を飲干して、紅葉を見にく者は、紅葉の枝へ瓢箪を附けて是をかつぎ、なりは黒木綿の紋付に小倉の襠高袴まちだかばかま穿いて
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その時、半蔵は腰につけて持って行った瓢箪ふくべを取り出した。木盃もくはいを正香の前に置いた。くたぶれて来た旅人をもてなすようにして、酒を勧めた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
時に、お師匠さま、ちょうど昔で言えば菊の酒を祝う季節もまいっておりますから、実は瓢箪ふくべにお好きな落合の酒を入れまして、腰にさげてまいりました。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もし岩倉公子の一行をこの辺鄙へんぴな山の中にも迎えることができたなら、おそらく村の百姓らは山家の酒を瓢箪ふくべにでも入れ、手造りにした物をさらにでも盛って
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そういう勝重が羽織のかげに隠し腰に着けている一つの瓢箪ふくべをお民に出して見せ、それから勝手を知った木小屋の方へ行こうとしたので、お民はちょっと勝重のそでを引きとめて言った。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「奥さんの前ですが、」と正香は一口飲みかけた盃を膳の上に置いて、「いつぞや、お宅の土蔵のなかに隠していただいた時、青山君が瓢箪ふくべに酒を入れて持って来て、わたしに飲ませてくれました。 ...
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)