獄舎ごくや)” の例文
旧字:獄舍
鬼となっても、我が子を、冤罪むじつ獄舎ごくやから助け出さなければならぬという、燃えるが如き父性愛以外に、何ものもなかった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ですが先生、下司げすは下司で、この羽織を着た窮屈さッたらありませんでしたぜ、わっしあ思いますが、この上にはかまでも穿いた日にゃ、たって獄舎ごくやくるしみでさ。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頭山満と自分わしと三人は並んで県庁の裏の獄舎ごくやで木馬責めにかけられた。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「すると、獄舎ごくやに罪人を溢れさせて、手柄顔を誇っておる北町奉行のごときは、ちと、滑稽なことになりますな」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
獄舎ごくやにいる間には副食物に時々魚類さかなが付く。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「後で、権之助から、ゆるゆる聞くがよい。ひと口にいえば、天の御加護があったか、にわかにきのう無罪をいい渡されて、秩父ちちぶ獄舎ごくやから放されたのじゃ」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
塀ごしに、獄舎ごくやの塀がのぞまれる。——花世は、そこに立って、尺八を吹き出した。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
刑部が、多年にわたって、西国の密貿易ぬけがい仲間とむすび、各地の浮浪人とともに、大陰謀をもくろんでいたということは——これはこんど獄舎ごくやにつないだ阿能十蔵から明るみに出たことだった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おまえがわしにいわなかったことも、役所へ出れば残らず泥を吐かねば役人は納得せぬ。武蔵は武蔵として、獄舎ごくやに置いたまま、おまえの身は一年でも二年でも、生かしておいて拷問ごうもんにかける。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)