狂瀾怒濤きょうらんどとう)” の例文
とりわけこの岬のあたりは、暗礁の多いのと、潮流の急なのとで、海は湧立わきたちかえり、狂瀾怒濤きょうらんどとうがいまにも燈台をくつがえすかと思われた。
おさなき灯台守 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
刻一刻と速さを増し——せっかちな激しさを加えた。五分もたつと、ヴァルーまでの海は一面に抑えきれぬ狂瀾怒濤きょうらんどとうをまき上げた。
離れたが最後、雲竜相応じて風を起こし雨を呼び、いかなる狂瀾怒濤きょうらんどとう、現世の地獄をもたらすかも知れないと言い伝えられている乾坤二刀が、今や所を異にしたのだ!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
嵐が急にやんだように、狂瀾怒濤きょうらんどとうが一時に鳴りを鎮めたように、乗組員たちの気分はにわかにさわやかとなった。立っていた者は、へたへたとその場に崩れるように尻餅をついた。
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
けだし平民主義の政治世界に侵入するあたかも狂瀾怒濤きょうらんどとうの海面をいてはしるがごとく、貴族的の堤防は一時に潰裂せざらんと欲するもあたわざるの勢いにして、すなわち米国革命戦争のごとき
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
進化の法則で吾等猫輩の機能が狂瀾怒濤きょうらんどとうに対して適当の抵抗力を
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
よべどさけべど、こたうるものは、狂瀾怒濤きょうらんどとうのみである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
せつに狂瀾怒濤きょうらんどとうをのみ求むるなり
犯人 (新字新仮名) / 太宰治(著)
全身に、妙な白い入墨いれずみをした原地人兵が、手に手に、たてをひきよせ、やりを高くあげ、十重二十重とえはたえ包囲陣ほういじんをつくって、海岸に押しよせる狂瀾怒濤きょうらんどとうのように、醤の陣営目懸めがけて攻めよせた。
はなれたが最後、雲竜相応じて風を起こし雨を呼び、いかなる狂瀾怒濤きょうらんどとう、現世の地獄をもたらすかも知れないと言い伝えられている乾坤二刃が、いまにいたって依然として所を異にしているのだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)