こしかけ)” の例文
そこのこしかけとばりなどは何という名の物であるか解らないが、綺麗にきらきらと光って見えるものであった。
嬌娜 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
小翠はただ首を垂れて微笑しながら手でこしかけの隅をむしりだした。夫人がいってしまうと小翠はもういたずらをはじめて、元豊の顔をべにおしろいでくまどって鬼のようにした。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
旅人の中にはもう二人ほどこしかけから起ちあがった者があった。べつに怪しいこともなさそうだと季和は思った。と、腰をあげた二人の旅人が急にひっくりかえって身悶えした。
蕎麦餅 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
室の中のこしかけのうえに秋月が泣きながらすわっているそばに、番人の一人が腰をかけていて、それが太いおおきな指を秋月の顎の下へやって、顎をいじりながらからかっていた。
蘇生 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
喬生が人間の骸骨と抱き合ってこしかけに腰をかけていたが、その時嬉しそうな声で何か言った。老人は怖れて眼前が暗むような気がした。彼は壁を離れるなり寝床の中へ潜りこんだ。
牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そこには宮殿の楼閣が参差しんしと列っていて、その間には珍しい木や草が花をつけていた。すこし行くと大きな殿堂がきた。それは白壁の柱で、みぎりに青玉を敷き、こしかけには珊瑚を用いてあった。
柳毅伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その女はこしかけの上に坐っているらしかった。捕卒は不審しながら進んで往った。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
痩せた男は其処にあるこしかけに手をさしながら内の方へ顔を向けて言った。
陳宝祠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
李生はそこにあったこしかけに腰をかけて待っていた。
申陽洞記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
婆さんは指で空いたこしかけを教えた。
蕎麦餅 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)