爪先上つまさきのぼ)” の例文
内地のどこかに胸突八丁という難路があるが、そんな道は愚かである。約一里の道が、ことごとく爪先上つまさきのぼりだ。
淡紫裳 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
須永すながはもとの小川亭即ち今の天下堂という高い建物を目標めじるしに、須田町の方から右へ小さな横町を爪先上つまさきのぼりに折れて、二三度不規則に曲ったきわめて分りにくい所にいた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
車夫は草鞋わらじ足袋たび穿かずに素足すあしを柔かそうな土の上に踏みつけて、腰の力で車を爪先上つまさきのぼりに引き上げる。すると左右をとざす一面のすすきの根からさわやかな虫のが聞え出した。
初秋の一日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
引き返して砂利じゃりの敷いてある所を少し来ると、会場から逃げた人がちらほら歩いている。盛装した婦人も見える。三四郎はまた右へ折れて、爪先上つまさきのぼりを丘のてっぺんまで来た。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
引き返して砂利の敷いてある所をすこると、会場から逃げた人がちらほらあるいてゐる。盛装した婦人も見える。三四郎は又右へ折れて、爪先上つまさきのぼりを岡の頂点てつぺん迄来た。みち頂点てつぺんで尽きてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)