熟視みまも)” の例文
銀之助は直にもう高鼾たかいびき。どんなに丑松は傍に枕を並べて居る友達の寝顔を熟視みまもつて、その平穏おだやかな、安静しづか睡眠ねむりを羨んだらう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『いや、戯言じようだんぢやない。』と銀之助は丑松の顔を熟視みまもつた。『実際、君の顔色は好くない——て貰つては奈何どうかね。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しまひには、対手が何にも自分の話を聞いて居ないのだといふことを発見みいだした。しばらく丑松は茫然ぼんやりとして、穴の開くほど奥様の顔を熟視みまもつたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その時、お雪は不思議そうに夫の顔を熟視みまもって、「誰も暇が貰いたくて、下さいと言うものは有りゃしません」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「この子は又、どうしてこんなに弱いんでしょう」とお雪は種夫の顔を熟視みまもりながら言った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三吉は姪の顔を熟視みまもった。「——お前の言うのは正太さんのことかい」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「人の一生というものは、君、どうなるか解らない。」と自分は男の顔を熟視みまもり乍ら言った。「これから将来さき、君がどんな出世をするかも知れない。僕がまた今日の君のように困らないとも限らない。 ...
朝飯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
母親おふくろは源の横顔を熟視みまもって
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)