焼香しょうこう)” の例文
旧字:燒香
(洗濯物を一枚一枚畳みながら)いまの、あの、妹さんがお父さんに手をひかれて、よちよち歩いてお焼香しょうこうした時の姿が、まだどうしても忘れられません。
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
主人あるじは東に向い一拝して香をき、再拝して退さがった。妻がつゞいて再拝して香を焚き、三拝して退いた。七歳ななつの鶴子も焼香しょうこうした。最後におんなも香を焚いて、東を拝した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そこに白い幕をかけ、焼香しょうこうの準備がしてあった。露地に長い腰かけをおいて、会葬者はそこに立ち並ぶのである。私達は下宿人等と一緒に並んで立った。花輪がいくつもある。
風宴 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
堀部安兵衛も同宿の毛利小平太、横川勘平を代表して、その席につらなった。で、ひととおり読経と焼香しょうこうがすんだ後、白銀三枚を包んで寺僧にいたして、一同別席でおときについた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
ふたたび焼香しょうこうをすると、雪の下をずり退がって、両手を開きめに膝へ置いた。赤穂城の大広間で見た以来、彼のそうした厳粛げんしゅくな居ずまいを見ることは、久しぶりな事であった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お焼香しょうこうのお客様きゃくさまがおえでござんす。よろしかったら、おとおもうします」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
僕たちは、安倍さんのあとで、お焼香しょうこうをした。すると、また、涙が出た。
葬儀記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)