焼金やきがね)” の例文
ふと、彼は、焼金やきがねで頭を突きとおされたように、思い出した。お蔦の顔と、眼の前で今はじめて見たこの男の名を。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半年のうちには大難があると言った占い者の予言は、焼金やきがねのように女の胸をじりじりとただらして来た。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その日はカラリと晴れた上天気で、陽はカンカンと焼金やきがねくさい復興市街の上を照らしていた。杜は途中にして、ミチミの名を書いた旆を、宿に置き忘れてきたことに気がついた。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まず位改くらいあらためといって、金質の検査をし、その後に、さまざまの金質のものを一定の品位にする位戻くらいもどしということをやり、砕金さいきんといって地金じがねを細かに貫目を改め、火を入れて焼金やきがねにし、銀、銅
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
奥の方から眼に焼金やきがねを当てるような、大幅のほのおが、カッと氾濫して来たのです。
触れたがさいご、焼金やきがねからシューッと青い火花が飛ぶ——火花は生命いのちばたきだ。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
焼金やきがねをたたく金敷のうえに、ぽろぽろと、涙がこぼれた。
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)