無名指くすりゆび)” の例文
是れだけった奴があって、不憫にはあったが、何うも許し難いからわしは中指を切ろうと思ったが、それも不憫だからみん無名指くすりゆびを切った
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
左の手はしょっちゅう洋袴ずぼんのポケットへ入れていましたが、胸のハンカチを取出すとき、案外白い大きい手の無名指くすりゆびにエンゲージリングの黄ろい細金がきらりと光ったのを覚えています。
扉の彼方へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
これは頭髪を鷲掴わしづかみにして、床上を引き摺られた時に生じたものと覚しく、両頸にも緊縛のあとがあり、右手頸及び左脇腹にも、同じく一カ所ずつの擦過傷、同時に左手小指及び無名指くすりゆびが骨折し
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
女房が湯を汲みに起つと、婦人は古河君に会釈えしゃくして隣りの椅子に腰をかけた。そうして、瀬戸の火鉢に手をかざすと、右の無名指くすりゆびには青い玉が光っていた。左の指にも白い玉がきらめいていた。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と受けましたがひどい奴で、中指と無名指くすりゆびの間をすっと貫かれたが、其の掌で槍の柄を捕まえて、ぐッと全身の力で引きました。前次公はよろめいて前へ膝を突く処を、權六が血だらけの手でおさえ付け
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
娘は俯向うつむいて、型のようにちょっと無名指くすりゆびの背の節で眼を押えた。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)