無人ぶじん)” の例文
手提てさげはすぐ分った。が、この荒寺、思いのほか、陰寂な無人ぶじん僻地へきちで——頼もう——を我が耳で聞返したほどであったから。……
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
裏木戸を押して入ると、最早とがめる者もありませんが、締りは恐ろしく嚴重で無人ぶじんとわかり切つてゐても、外からはもぐり込む隙間すきまもありません。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
これ千年の深林をめつし、人力を以て自然に打克うちかたんが為めに、殊更に無人ぶじんさかひを撰んで作られたのである。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
甚伍 へえ、何しろ無人ぶじんで。
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
白望しろみの山続きに離森はなれもりと云う所あり。その小字こあざに長者屋敷と云うは、全く無人ぶじんの境なり。ここきて炭を焼く者ありき。或夜あるよその小屋の垂菰たれこもをかかげて、内をうかがう者を見たり。
遠野の奇聞 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)