火除ひよ)” の例文
「……こうしていれば寒くもなく火除ひよけにもなるからな、それから飯櫃めしびつをみたら残ってたから、手ついでにこんな物を拵えて来たよ」
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一ツ橋門外の二番御火除ひよけ地の隅に居据いすわっている雪だるまも、一方に曲木まがき家の御用屋敷を折り廻しているので、正月の十五日頃までは満足にその形骸けいがいを保っていたが
半七捕物帳:28 雪達磨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
浅草火除ひよ賭試合かけしあいの小屋を立ち退いた後、奥州街道で春日重蔵を返り討ちにしようとしたが、人違いだったので、そのまま旅から旅の漂泊さすらいを重ね、中仙道を経て
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昨日のあがだかでは千五百円の大損、それに引きかえて、同所の、火除ひよけ地へ、毎夜出る麦湯むぎゆの店は百五十軒に過ぎ、氷水売は七十軒、その他の水菓子、甘酒、諸商人の出ること、晴夜せいやには
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それは倒れ残った火除ひよべいや、きたならしく欠け崩れた石垣などと共に焼け跡のありさまをかえってすさまじくかなしくみせるようだ。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼は、神田川の火除ひよけ地まで駆けると、脛のききそうな辻駕を拾って
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右へ火除ひよけ用の厚い土塀に沿って廻ると、向うに屋根を掛けた釣瓶つるべ井戸があり、その手前の左側に勝手口があった。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)