火達磨ひだるま)” の例文
なおも、お葉は、火達磨ひだるまのごとなって、しちくどう、おれを説き伏せようとした。けれど、とにかく、一度、九州に帰ってからということで、話が折り合うた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
青江三空曹は、もうすこしで火達磨ひだるまになるところでありましたが、小浜兵曹長の勇ましいはたらきにより、その一歩手前で服についた火は消されたのであります。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしていずれも烈しい焔を全身から放った火達磨ひだるまのような恰好で、組んず解れつ街路を転げ廻っている。無残とも凄惨とも評しようのない地獄絵のような場面なのであった。
生不動 (新字新仮名) / 橘外男(著)
火達磨ひだるまのようになって、今や内部の重要な書類を廓外かくがいへ持ち出しているという。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
◯撃墜されるB29が火達磨ひだるまとなって尚飛んでいるすさまじさ。そのうちに空中分解をしたり、そのまま石のように燃えつつ、落ちて行く。闇の方々より、拍手と歓声が起こる。
海野十三敗戦日記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まるで転がりやまぬ火達磨ひだるまみたいに、山門を跳びだし、道を走り、石橋しゃっきょうを渡って、ほっと大息ついて振り向くと、そこを関門としてか、追って来たさいきゅうの二人は、石橋の欄干らんかんに腰をかけて
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)