渾力こんりき)” の例文
忍剣にんけんは、渾力こんりきをしぼって、それを引きぬこうとこころみたが、ぬけるどころか、大山たいざんにのしかかられたごとく一寸のゆるぎもしない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あえて意識いしきしない共和きょうわと、たがいの援護えんごがそこに生まれた。すそをあおるほのお熱風ねっぷうよりは、もっと、もっと、つよい愛を渾力こんりきで投げあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と息を返した重蔵は、ガッキリこたえて弓形に腰がるまで丹田に渾力こんりきを集めた。エエイッ、エエイッ——続いて圧倒的な気合いが押した。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くわッと目を開いた源六が、断末とはいえ口惜しまぎれの渾力こんりき、お蝶の腕へねばりついて、これこそまったくの必死必殺。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが渾力こんりきをこめて撃下うちおろした太刀風を、一度でもひらりとかわした作左衛門はむしろ奇蹟と云ってもよかった——が
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新九郎は焦心せきだした。来国俊の刀も折れろ、後藤祐乗ごとうゆうじょうつばも割れろとばかり、むッと渾力こんりきを柄にあつめて最後の一押し。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
口をへの字に曲げて渾力こんりきをしぼっているかれの形は、力をこめればこめるほど冷蔑れいべつと滑稽を思わせますが、吾人にもこんな例がままあって、けばかえって不幸な扉を、無理にも開こうとし
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)