淹留えんりゅう)” の例文
最も奇とすべきは溝部で、或日偶然来て泊り込み、それなりに淹留えんりゅうした。夏日かじつあわせに袷羽織ばおりてんとして恥じず、また苦熱のたいをも見せない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
既に十有余日山中なる塩湖と云へる市府に淹留えんりゅう、空しく曠日こうじついま華盛頓ワシントン府に達するあたはず……現今英米両国の間に起りたる“アラバマ”一条すこぶる困難の事情に至り
黒田清隆の方針 (新字新仮名) / 服部之総(著)
そうしてまた旭川でアイヌの熊祭を観、札幌に淹留えんりゅうし、函館より海を越えて当別とうべつのトラピスト修道院を訪ねた。ただこのフレップ・トリップは主として樺太における収穫である。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
己のやしきと親長のやしきとに、十余日淹留えんりゅう、正月年頭の儀を了えて鞍馬に帰ったとある。
いで抽斎は再び弘前へ往って、足掛三年淹留えんりゅうした。留守に父の亡くなった旅である。それから江戸に帰って、中一年置いてよしが生れ、その翌年また八三郎が生れた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そして航海中暴風にって、下田しもだ淹留えんりゅうし、十二月十六日にようよう家に帰った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)