淡紫うすむらさき)” の例文
丁字形の白ペンキの二尺ばかりの立標に W. C. と小さき横文字にて書きたる、そのつつましさに淡紫うすむらさきの花をすりつけて過ぎしは誰ぞ。
春の暗示 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
黄の涼絹すずし単衣ひとえ淡紫うすむらさきをつけて扇を使っている人などは少し気品があり、女らしく思われたが、そうした人にとって氷は取り扱いにくそうに見えた。
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
中の間なる団欒まどゐ柱側はしらわきに座を占めて、おもげにいただける夜会結やかいむすび淡紫うすむらさきのリボンかざりして、小豆鼠あづきねずみ縮緬ちりめんの羽織を着たるが、人の打騒ぐを興あるやうに涼き目をみはりて、みづからしとやかに引繕ひきつくろへる娘あり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
白いあわせに柔らかい淡紫うすむらさきを重ねたはなやかな姿ではない、ほっそりとした人で、どこかきわだって非常によいというところはないが繊細な感じのする美人で
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この時節にふさわしい淡紫うすむらさきの薄物のをきれいに結びつけた中将の腰つきがえんであった。源氏は振り返って曲がりかどの高欄の所へしばらく中将を引きえた。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
は現在では主人のいない家であったから喪の色のも作らなかったため、淡紫うすむらさきのを持たせて車に乗った。
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
きれいに染め上がった朽ち葉色の薄物、淡紫うすむらさきのでき上がりのよい打ち絹などが散らかっている。
源氏物語:28 野分 (新字新仮名) / 紫式部(著)
山吹やまぶきの色、淡紫うすむらさきなどの明るい取り合わせの着物は着ていたが顔はまたことさらに美しく、染めたように美しく、花々とした色で、物思いなどは少しも知らぬというようにも見えた。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
夫人は柔らかな淡紫うすむらさきなどの上に、撫子なでしこ色の細長をゆるやかに重ねていた。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)